健診で「脂質異常症」といわれたら

更新日:2026年8月6日
監修:板倉 卓司
健診結果に「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が高い」などと書かれていても、体調には変化がないことが多く、「何をすればいいの?何かする必要があるの…?」と戸惑う方が少なくありません。 脂質異常症は、動脈硬化の進行を早めるリスク因子であり、脳梗塞や心筋梗塞といった疾患を招くことがあります。 この記事では、ご自身の健診結果の意味を理解することを目指して解説していきます。
脂質異常症について、知っておきたい3つのポイント
- 脂質異常症は、血液中の脂質濃度が基準から外れた状態です。 LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)や中性脂肪が高い場合に加えて、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が低い場合が含まれます。
- 脂質異常症は、動脈硬化の進行を早め、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。 多くの場合、自覚症状がなく、気づきにくい病気ですが、「気づきにくいのに、健康問題になりうる」ことに注意しましょう。
- 健診の数値だけでは治療内容は決まりません。 年齢、血圧、喫煙、持病、家族歴なども含めて評価と判断が必要です。
健診で測定する「脂質」とは
そもそも、脂質は体にとってどのような働きをするのでしょうか。コレステロールや中性脂肪は、体をつくる細胞やホルモンの材料・エネルギー源になります。LDLは、コレステロールを全身へ運び、HDLは余分なコレステロールを回収する働きに関わります。
「善玉」「悪玉」という呼び方を見かけますが、本来はどちらも体のなかで役割をもっている分子です。
脂質異常症とは
血液中におけるこれらの脂質のバランスが崩れた状態を「脂質異常症」と呼びます。
脂質異常症では、動脈硬化が早く進行することが知られているため、放置せずに管理することが重要です。
脂質異常症の診断基準
| 項目 | 一般的な診断基準 | 数値の意味 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140 mg/dL以上 | 高い場合に、動脈硬化と関連します |
| HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 | 低い場合に、動脈硬化と関連します |
| 中性脂肪(TG) | 空腹時150 mg/dL以上 随時175 mg/dL以上 |
食事、飲酒、体重、血糖などの影響を受けます |
| non-HDLコレステロール | 170 mg/dL以上 | HDL以外の、動脈硬化と関連するコレステロールの目安です |
これらは、脂質異常症を「見つける」ための基準です。服薬を始める基準や、一人ひとりの目標値ではありません。また、中性脂肪は最後の食事から採血までの時間によって影響されることに注意しましょう。
脂質異常症は、なぜケアが必要?
LDLコレステロールが高い状態などが長く続くと、血管の壁に変化が起こり、動脈硬化が早く進みます。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などの発症と関連します。
動脈硬化のリスクは脂質の数値だけでは決まりません。高血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病、過去の心臓・血管の病歴なども含めて判断する必要があります。
脂質異常症に影響すること
- 肉の脂身(あぶらみ)、加工肉、菓子類などに偏った食事
- 運動不足、体重増加、飲酒、喫煙
- 年齢や遺伝的な体質
- 糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病など
- 一部の薬剤の影響
生活習慣に気をつけていても、体質や別の病気の影響で数値が上がることがあります。「食べすぎ」のイメージがあるかもしれませんが、食事だけが原因ではありません。
脂質異常症 受診の目安
健診結果に「要精査」「精密検査を受けましょう」などと記載されている場合は、医療機関に相談しましょう。
数値が大きく基準から外れている場合や、年単位で異常値が続いている場合、若いころからLDLコレステロールが高い場合、血縁者に若年で心筋梗塞などを発症した方がいる場合などでは、早めに受診されることをお勧めします。
医療機関で確認すること
脂質異常症の外来では、健診時の採血結果や過去の結果、食事・運動・飲酒・喫煙などの生活習慣、持病、服薬、家族歴などを確認します。必要に応じて血液検査を行い、血糖、肝臓、腎臓、甲状腺など、脂質に影響する病気がないかを調べます。
あわせて、脂質の数値だけでなく、心臓や血管の病気を起こすほかのリスク因子を総合的に評価し、栄養の見直しや薬物治療について検討します。受診時には健診結果に加えて、お薬手帳、過去の検査結果があると役立ちます。
脂質異常症 治療の考え方
脂質異常症は、食事、運動、薬物などの方法を組み合わせて治療します。
- 食事(栄養の見直し)
- 運動習慣の見直し
- 薬物療法
内容は、脂質異常症の種類や程度、年齢、持病、これまでの心臓・血管の病気などによっても異なります。大切なことは、薬物治療のみならず、生活習慣の見直しをすることです。
また、たとえば同じ数値でも、その人の持病や既往歴によって治療薬や目標が異なることがあります。ご自身の治療目標や治療により期待できる効果、薬剤の副作用については、医師にご相談ください。
今日からできること
- 健診結果を見直す:LDL、HDL、中性脂肪、判定区分、再検査・受診の指示を確認しましょう。
- 食事の見直し:肉の脂身や揚げ物など、食事の偏りがある場合は、魚、大豆製品、野菜の比率を増やした食事を心がけましょう。
- 運動する:通勤や昼休みの歩行など、無理なく続けられる方法をお勧めします。持病や関節の痛みがある方は、医師にご相談ください。
よくある質問
Q. 太っていなくても脂質異常症になりますか?
A. やせていても脂質異常症になることがあります。体重や食生活だけでなく、体質、年齢、ほかの病気、薬などが関係するからです。体型だけで判断せず、健診結果と向き合うことが大切です。
Q. 前日の食事で数値は変わりますか?
A. 特に中性脂肪は、食事や飲酒、採血までの時間の影響を受けます。一方、異常がすべて前日の食事だけで説明できるとは限りません。採血したタイミングを伝えたうえで、再検査が必要か相談してください。
Q. 卵は食べないほうがよいですか?
A. 一律に卵を禁止する必要はありません。特定の品目よりも、食事全体の栄養バランスを見直すことが重要です。ほかの持病(高血圧、糖尿病など)や、異常が出ている脂質のタイプによって、見直し内容は人ぞれぞれです。栄養について、医師の診察や管理栄養士の栄養相談を利用することも有用です。
Q. 薬は、一生飲み続けないといけませんか?
A. 服用期間は、薬を使う目的や治療後の数値、生活習慣、ほかの病気によって異なります。薬の効果によって数値が下がっている場合、薬を中止すると再び異常値になることがあり、注意が必要です。 薬を内服するかしないか、という判断は価値観の問題でもあるため、健康リスクにとどまらず考え方を相談することも重要です。
受診をご希望の方へ
当院では、内科で健診後の相談を受け付けています。受診時は、健診結果のほか、お薬手帳、過去の検査結果をお持ちいただけるとよりスムーズです。
参考資料
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療については、医療機関にご相談ください。